死を意識して生きる文化

人生探究家の文蔵です。
私が生き方を研ぎ澄ますためのセッションをするときによくする質問に

「もし○○日後に死ぬとしたら何をやりますか?」

というものがあります。
普段私たちは自分が死ぬとは思っていないので、
「いつかやろう」ということを「今日でなくてもいいか」と、
後回しにして生きてしまう事が多いです。

でも、死を意識すると
「これだけはやらずに死んでなるものか」
というものが出てきたりします。

映画とかでもありますよね。
地球が滅ぶ事がわかった瞬間に親子が和解したりする話。

それだけ「死」というものが我々にとって特別な意味を持っているという事なのですが、
この特別なものを避けられる人はほぼいないのにも関わらず、
私たちは直前まで意識する事がないのです。

でも、毎日どこかで人は亡くなっていますし、いつ人生が終わるのかなんて、
本当は予期できませんよね。

死は特別なものだけど、遠いものではない、というのが実情だと思います。

「自分が死ぬ事を考えるなんて怖くて無理」

という人もいるかもしれませんが、
仮に半年後死ぬという事がわかったら、きっとやりたいこと全部やりますよね?

本当に死ぬわけではないけれど、死を意識するというのは有意義なことだと私は考えています。

そして、実は昔の日本人は、この「死」という概念に真摯に向き合っていました。

皆さんは『辞世の句』というものを聞いた事がありますか?

これは昔の日本の文化で「自分の人生とはなんだったのか?」テーマで、
五七五の俳句や和歌、短い詩にしてしたためるというものでした。

日本最古の辞世の句はヤマトタケルの詠んだ

大和は 国のまほろば たたなづく 青垣山ごもれる 大和しうるはし

というものだと言われています。

意味としては
大和という国は(これまで行ったことのある国々と比べても)素晴らしい。
特に青く重なり合うような、山々に囲まれる大和は美しいものだ。

という意味です。

ヤマトタケルは遠征の地で命を落としたので、
自分の生まれ育った故郷を思いこの句を書いたのだと思います。
ヤマトタケルが生きた時代は西暦72年〜115年頃だと言われています。
辞世の句は、そんな昔から近年まで続いた文化でした。

他の年代ですと

・あはれなり わが身の果てや 浅緑 ついには野辺の 露と思へば(小野小町-825年〜900年)
・願わくは 花の下にて 春死なむ その如月の 望月のころ(西行法師-1118年〜1190年)
・曇りなき 心の月を先立てて 浮世の闇を 照らしてぞ行く(伊達政宗-1567年〜1636年)
・君が為 尽くす心は 水の泡 消えにし後ぞ 染み渡るべき(岡田以蔵-1838年〜1865年)
・これでよし 百万年の 仮寝かな(大西瀧治郎-1891年〜1945年)

と、このように第二次世界大戦が終わるまで続いていた文化です。
なぜこの文化が途絶えたのか。

いろいろと書きたい事はあるのですが、
それはまた別の機会書いてみます。

さて、この文化ですが、失われてしまった事が本当に惜しい文化だと私は感じています。
この文化があったおかげで、昔のある程度教養のあった人物は
自分の人生と本気で向き合い毎日を過ごせたのではないかと思うのです。

もし今、あなたが辞世の句を詠もうと思ったらどんな句になりますか?

自分の人生を短い言葉の中に納めるとするなら、
何が思い浮かぶでしょうか?

後悔?
やりきった満足?
誰かへの想い?

今まで考えなかったようなことも湧いてくるのではないでしょうか?

昔の人は現代人よりも死というのが身近だったからこそ、
こういった文化が生まれて、もしかしたら現代人よりも濃密な人生を歩んでいたのかもしれません。

確かに私たち現代人は死のリスクはかなり少なくなりました。
しかし、周りを見渡してみてください。
情熱を燃やして生きている人がどれだけいるでしょうか?

自分はどうでしょうか?

あと数年、数ヶ月の命だとしたら、今の日々と同じように過ごすのでしょうか?

時々、古人達の残した辞世の句を詠んでみて、人生観に想いを馳せるのも面白いと思います。

最後に私が最も好きな辞世の句をお伝えして、
本日のエッセイを終わろうと思います。
最後までお付き合いいただきありがとうございました。

散りぬべき 時知りてこそ 世の中の 花も花なれ 人も人なれ(細川ガラシャ-1563年〜1600年)

意味:自身が散る瞬間を思いながら生きる事で、花は花らしく咲くことができるし、人は人らしく生きることができるのではないだろうか(文蔵意訳)

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